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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々

「てっきり、野垂れ死んだのかと思ってたが、こうして顔を合わせる機会があるとは考えてなかったぞ。その辺りどうなんだ――ええっ、愚弟よ」


 と、いきなりその様に言われ――


「久しぶりだってのに、また随分な御挨拶だな――この、クソ兄貴!」


 俺も、そんな言葉で応じた。


 アイドリングなしの辛辣な応酬が、不思議と何処か懐かしくさえある。最も感傷に浸るようなものとは、180度ほど異なるが……。

 高崎揮市――ずんぐりとした体型は、間違いなく親父譲りで、それよりも一回り程でかい。俺より五つ年長の兄貴とは、昔からあらゆる場面で衝突を繰り返していた。と言えば、やや語弊がある。学生の時に柔道をやっていたこともあり、身体的な意味でも俺の方がかなり一方的にやり込められたものだ。

 はっきり言って、反りが合わない。どこがどうという訳でもないが、親父に似すぎている
ということだけで俺の方の理由としては十分過ぎるのであった。


「それにしても、老けたな――兄貴」


 ギラギラと油の乗った浅黒の顔には、かなり深い皺が刻まれている。M字を描く生え際も、親父と全く同様に後退しつつあった。


「フン、ぬかせ! 社長という重責を担っているとな、自然と責任がこの顔にも刻まれてゆくものだ。まあ、勝手気ままな――無責任な次男には、わかるまいよ」


 そう皮肉を言い、輝市は俺の顔をギロッと睨みつけている。
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