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第1章 一人と一人

『若い女性を中心に、カリスマ的人気を誇る――』



　テレビの音声を呆然と耳にしながら、俺は気怠い身体を動かし洗面所に向かう。



『これは、昨日のライブ会場の映像です。それはファンのアンコールに応え、最後の一曲を歌い終えた瞬間のことでした――』



　シャカシャカと歯ブラシを動かしつつ、リビングに戻って来る俺。



『キャアアアアア――！！』


　と、そんな悲鳴とも怒号ともつかない叫びが、俺の視線をテレビ画面へと誘う。

　映し出されている映像は、野外の特設ライブ会場か。舞台から伸びたランウェイを、駆け抜けて行く女性シンガーらしき姿が。

　耳を障っていたのは、その両脇のファンたちが、その興奮も顕わに鳴らし上げた声であった。

　すると――


『みんなー！　まったねー！』



「ん？」


　聞き覚えの声と言葉を耳にして、俺は思わず目を大きく見開く。


　ランウェイの先端までを全力で走った彼女は、その勢いに任せ――

　会場の観客の坩堝へと、躊躇なくダイブを慣行。


　アレ……今の？


　俺は胸騒ぎを覚え、テレビの画面に釘付けとなっていた。