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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々
顔を真っ赤にして、怒ったかと思えば――
『そら、見たことか』
と、そんな言葉が鳴る。或いは、見下げ果てた、とばかりに――
『俺に逆らうからだ』
――とも。または、冷笑を浮べ――
『言うことを、聞いておればな』
――とも。
それらは俺の脳裏が勝手に思い浮かべた情景。畏怖する心が抱いた、イメージの形である。それだから、実際に親父は何一つの言葉を、まだ発してはいない――。
「……」
黙って佇む親父の反応は、その腹にどの様な想いが隠されているものなのか、俺にはよくわからなかった。
只――
ん……?
何らかの違和感は、覚えている。何にそう感じたものか、それもわからないが……。
俺と親父は無言のまま、暫し互いの顔を見やっていた。
そうした中で、先の俺の取り留めもない告白を受け、頻りにざわつき始めていたのは、取り巻く周囲の者たちであった。
「フン――ろくな話ではないと思っていたが、まさか、そこまでとはな。拓実、だから俺が言ったろう。こうして集まった甲斐はあったようだ」
まずは揮市兄が、その鼻息も荒く――。