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ホントの唄(仮題)
第13章 別れは劇的ならずとも
他のどれとも違うことは、そうであるのだとしても。仮初めにも『男女の別れ』という意味では、それは少なくとも俺の方が場数を踏んでいる、らしく。
だから、平気という理屈は屁理屈にすらなるまいが。それでも一応、諦めること――諦めたような顔をするのには慣れているのだろうか。
しかし、そんなものは、なんら無意味なスキルであり。俺が涼しい態度を取ればこそ、真にしてみれば、それが不快であるのかもしれなかった。
そうと、察しながらも――温かく柔らかな風が吹き抜ける、斜陽の眩しいプラットホームで。
「……」
「……」
俺たちは言葉もなく同じ方向を向き、まだ見えない電車の姿を見つめようとしている。
そして、程無く――
『まもなく一番線には16時46分発、あさま624号東京行が到着いたします』
そのアナウンスは流れた。