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ホントの唄(仮題)
第13章 別れは劇的ならずとも
※ ※
部屋に帰った。
すっかり傾いた太陽が、カーテンを開け払っていた窓から、容赦のない西日を差しこませてきていた。それがフローリングに、俺の影を長く伸ばし尽くす。
おっ、この部屋って。意外と広いじゃねーか……。なんて、ふと思ったりしている。
当たり前の様に、一人で。そう、これが当たり前なのだ――と、自らに言い聞かせた。だが、その効果は推して知るべし。
俺は脱力したように、ふらりとベッドに倒れ込んだ。真の残り香が、ふわりと鼻腔を擽る。
「……」
明らかに無理をしていた。それが、さっきまでの俺。四十の男としての体裁を守ろうと、何とか平静を保ってみせた。
馬鹿らしい。そんなもの、誰も褒めてなどくれないのに……。