この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第2章 緊急モラトリアム
俺は普段から、マメに料理するような男ではない。少なくとも朝は、簡単に済ませたい方なのだが……。
俺が「トーストでいいか?」と訊ねると、「えーっ! 私、朝はご飯じゃなきゃ、イヤ!」と、彼女は不平を漏らしたのである。
一体、どの口が言えたのか知らない。きっと彼女は、勝手気ままに生きてきたのだろう。軽く説教をしたい気分であったが、『馬の耳に念仏』との諺が脳裏に浮かび、俺はそれを止めた。
ともかくそうして用意した朝食を、俺はリビングのちゃぶ台の上に並べた。ちゃぶ台というかコタツなのであるが、今は夏なのでそう表現している。
あとリビングとはいっても、このアパートの部屋は1K。独り暮らしのスペースとしては十分なものだが、キッチンを除いた居住区にはベッドと件のちゃぶ台、あとはテレビやタンスや本棚等が居並ぶ。
その風景は適当に、察していただきたいものだ。