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ホントの唄(仮題)
第2章 緊急モラトリアム
「いや……」
「え……?」
思わず、抱きしめそうになった。そんな両手をグッと堪えて、俺はその手をゆっくりと真の肩に乗せた。
そして、そっと身体を引きはなし、真に言う。
「真――お前、さ」
「なに?」
「腹、減っただろ?」
俺がそう訊くと、一瞬キョトンとした彼女は――そのすぐ後に、笑った。
「うん」
その元気な返事を聞くと、俺は床に置いた買い物袋から大き目なキャップを取り出して、それを真の頭に目深に被せる。
「しょうがねえな。飯に行くから、支度しろよ」
この時点で、俺のその言葉に嘘はなかった。
今だけ、とりあえず今日は――そんな言い訳を、頭の中でしながら。
だが、もう真を突き放せない――それが自分なのだということも、とっくにわかっている。
だけどこの時にはもう、俺は気づいていたのだ。
俺と真、奇妙な二人のこの物語のこと――その終わりも。
それはきっと、俺の次の仕事が見つかるまで――なんて、ことにはならない。
おそらく、すなわち――
真が――ホントの唄を――見つける、まで。
だからこそ一層――
真が魅力的であるが故に、尚更――
少なくとも、俺にとって、それは……。