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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景

 夜、思い至った心境が、しかし次の朝、全く打ち砕かれることは割とよくあることだ。

 何の話かと言えば、別に大した話でもない。深い意味もなかった。只、わかってることがあるとすれば、それは夜と朝では気分が180度、違ってることが儘あり得るということ。

 何かを決意するのは、夜であることが多く。その決意がついえるのは、大抵が朝である。それは俺の持論だが、例えばこんな経験は誰しも心当たりの一つくらいある筈だ。

 健康のために、毎朝ジョギングをしようと決意。前の晩、やる気満々にウェアとシューズの準備をし、目覚ましを朝六時にセット。しかし次の朝、けたたましく鳴り響く目覚ましを止め「明日からでいいか」と呟くや、そのまま二度寝――なんて。

 そんなこと、この歳まで何ら成し遂げることなく生きていた俺のような男にしてみれば、幾多繰り返し最早反省するにも及ばない。

 まあ、くどくどと述べたこれらは、全て言い訳と思ってもらえれば、それで間違いがなかった。


 すなわち、そんな訳で――明けて、次の朝。


「うぅ……ん」


 何とも悩ましい音に耳を擽られ、目覚めた俺。


「――!」


 目の前にある顔の意外なまでの近さに、先ずは驚くより他はなかった。

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