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another storys
第27章 帆掛舟【潮騒】
三十二の夏。
夫の善治郎さんが亡うなった。
海に貝を取りに行って、潜った時に、岩に腰の道具が引っかかって、海面に出られんようになったということやった。
知らせを受けて、浜に走った時にはもう、仲間に引き上げられて事切れた姿やった。
「善治郎さん…なんでこないな事に…」
私は、善治郎さんの遺骸に縋って泣いた。
女の三十二は前厄や、と。
厄年というのは、悪いことだけやのうて、人生の節目、何かがある年なんやと、聞いたことがある。
十八で嫁に来た。
十八も、前厄やった。
私の幸せな結婚生活は、十四年で終わった…
夫の善治郎さんが亡うなった。
海に貝を取りに行って、潜った時に、岩に腰の道具が引っかかって、海面に出られんようになったということやった。
知らせを受けて、浜に走った時にはもう、仲間に引き上げられて事切れた姿やった。
「善治郎さん…なんでこないな事に…」
私は、善治郎さんの遺骸に縋って泣いた。
女の三十二は前厄や、と。
厄年というのは、悪いことだけやのうて、人生の節目、何かがある年なんやと、聞いたことがある。
十八で嫁に来た。
十八も、前厄やった。
私の幸せな結婚生活は、十四年で終わった…