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第28章 それぞれのX'mas 【Cross roads 他】

結婚記念日がついこないだだったから、花はもういいだろ。
やっぱベタにスイートテンダイヤモンドってやつか…？

指輪なんて結婚指輪以来買ってないけど。
ずっと嵌めてるから指のサイズは変わってないんだろう。…としたら、確か7号だったはず。
会社の帰りに、百貨店のジュエリーコーナーを覗いてみた。

「お探しのものがございましたら、どうぞお申し付けください」

ジュエリーコーナーの、上品な店員に話しかけられ、ちょっと怯む。

「あ、その…今年、結婚10年になるから、記念のリングを、と思ってるんだけど…幾らくらいからあるのかな…」

「スイートテンシリーズでしたら、こちらに。」

示されたショーケースの値段を見て卒倒しそうになる。
えーと。いちばん桁が少ないのでゼロが５つ。その上についてるのも決して若い数字じゃない。
ボーナスが入ったって家のローンもあるし、子供たちだってこれからまだまだ金がかかる。
生活家電だってそろそろガタが来るやつもありそうだし。諸々考えると、記念とはいえ指輪に百万なんて注ぎ込めるわけがなかった。

「ちょっと、どんなデザインがいいか、もう少しリサーチしてから出直します。」

動揺を押し隠し、あくまで自然にコーナーを離れる。
心臓が口から飛び出しそうだった。