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《愛撫の先に…》
第8章 《レッスン―――…》
とある金曜日お昼前、
菜々美は陽子の運転する車であのパウンドケーキの店を探していた。

『高橋くん取引先に行くならパウンドケーキを買ってきてくれ、だなんて』
『だからってあたしも?』
『中谷専務がくれたパウンドケーキを欲しがるから仕方ないじゃない、
菜々美しか店知らないし』

『店につけば思い出すけど住所なんてわからない、
結城さんの車だったし夜と昼間の景色なんて全然違うわ』

『迷う必要ある?
結城さんに電話したらいいじゃない。
お客を入れるチェックインの時間にはまだ4時間余りあるわ』

『電話…』
菜々美はさよならと言って引き留められたキスを思い出しなんとなく気まずいらしい。

『住所と店の名前を聞くだけよ』
『ん〜…』
適当な駐車場に車を停めるのを待ってから菜々美は携帯を出す。

『メールじゃだめ?』
『菜々美が繰り返し言ってくれる住所をカーナビに打ち込むんだから、
電話じゃなきゃだめよ』
『ん〜…意地悪だなぁ』

『だいたいセックスしといてM字開脚でアソコを見られるんだからそれ以上恥ずかしい事ないじゃない』

M字開脚だなんて…―――

渋る菜々美に陽子は携帯を奪い画面を出しコール音が聞こえると、
菜々美へ渡していた。

『結城です』
トクン‥
『菜々美さん?』
繰り返す結城の声に気持ちが高ぶりはしたが、
いつもと変わらない声色に落ちつきさえあった。

『パウンドケーキ?何故急に』
『大口の仕事の後には必ず甘い物を要求する課長命令で…あの…』

『あはははは、
中谷さんのパウンドケーキという訳ですか』

いつもは鼻にかかった笑い声なのに今日は…
あたしどっちの笑い方が好きかな…

『住所とお店がわからなくて』

『君の指を舐めながら食べたパウンドケーキはね、
ハニーデイズという店で住所は○○3丁目2の45』
あたしの指を舐めながら食べたパウンドケーキって結城さん!

『この電話は君がかけたものじゃないね?』
『あの…』

『高瀬?』
声のトーンが下がった?
『違うわっ』

『じゃ陽子さん』
『ん…』
『君らは仲がいいね…
羨ましいよ…』
『羨ましいだなんて…』

『今度からは君が自分の意思で電話をかけてくるように。
それと、レッスンには泊まりの用意を忘れないで』
声のトーンがまた下がった?
結城さん…
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