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危険な香りに誘われて
第9章 虎と女帝
大阪が梅雨入りして間もなくの事。
一台の黒いレクサスが、仕事帰りにスーパーへ立ち寄ろうとする真紀の側で止まった。
運転席から降りてきた白髪交じりの男が、真紀の前に立ちはだかり、軽く会釈した。
「岸本真紀様ですね」
突然見知らぬ男から声を掛けられ、真紀は、二三歩後退りをした。夜の7時前だが、まだ明るい。仕事帰りの買い物客も大勢いる。スーパーの駐車場には、ガードマンの姿も見受けられた。何かあっても叫べば、誰かしら助けてくれるだろう。
真紀は、カバンの肩紐を握り締めた。
「岡崎家の運転手、白鳥と申します」
落ち着いた声、身なりは、いかにも堅苦しい運転手風に見える。
「突然、お声掛けして申し訳ございません。本日は、奥様から真紀様をお連れするように、申し遣ったものですから」
真紀は、白鳥の言葉を頭の中で繰り返した。
岡崎家。奥様。
つまり、賢也のお母さん?
「ご一緒に来て頂けますね」
いきなり現れて、一緒に来いなんて。大丈夫だろうか。
賢也に聞いた方が良いかもしれない。鞄の中に放り込んだスマホを手探りで取り出した。
「坊ちゃまは、後からいらっしゃいます。その前に、どうしても真紀様とお二人でお会いしたいと、奥様が仰っておられます」
男は、丁寧な言葉遣いだが、頼み事ではなく、明らかに強要している。
一台の黒いレクサスが、仕事帰りにスーパーへ立ち寄ろうとする真紀の側で止まった。
運転席から降りてきた白髪交じりの男が、真紀の前に立ちはだかり、軽く会釈した。
「岸本真紀様ですね」
突然見知らぬ男から声を掛けられ、真紀は、二三歩後退りをした。夜の7時前だが、まだ明るい。仕事帰りの買い物客も大勢いる。スーパーの駐車場には、ガードマンの姿も見受けられた。何かあっても叫べば、誰かしら助けてくれるだろう。
真紀は、カバンの肩紐を握り締めた。
「岡崎家の運転手、白鳥と申します」
落ち着いた声、身なりは、いかにも堅苦しい運転手風に見える。
「突然、お声掛けして申し訳ございません。本日は、奥様から真紀様をお連れするように、申し遣ったものですから」
真紀は、白鳥の言葉を頭の中で繰り返した。
岡崎家。奥様。
つまり、賢也のお母さん?
「ご一緒に来て頂けますね」
いきなり現れて、一緒に来いなんて。大丈夫だろうか。
賢也に聞いた方が良いかもしれない。鞄の中に放り込んだスマホを手探りで取り出した。
「坊ちゃまは、後からいらっしゃいます。その前に、どうしても真紀様とお二人でお会いしたいと、奥様が仰っておられます」
男は、丁寧な言葉遣いだが、頼み事ではなく、明らかに強要している。