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危険な香りに誘われて
第9章 虎と女帝
「電話してもいいですか。賢也に聞かないと」

見上げる真紀に、白鳥は、首を横に小さく振り、薄い唇を開く。

「坊ちゃまは、反対されるでしょう」

勝手な事をして叱られたくない。怒った賢也の顔が浮かび、ぞくっとした。

「だったら、行けません」

「個人的な意見ですが、真紀様が、坊ちゃんと真剣にお付き合いをされるおつもりであれば、一度岡崎家を見ておくべきだと思います。その上で、もう一度、お付き合いをどうされるか考えた方が良い」

「どういう意味ですか」

「私の口から全てを申し上げることは出来ません。ただ、言えるのは、生半可な気持ちでは、ご無理。つまり覚悟が必要なんです」

何が言いたいのだろう。賢也と付き合うなら、覚悟がいるって、どういう意味。
賢也の口から家族の話を聞いたことはない。
マンション一棟を持っていることや、塾の経営をしていることは知っているが、詳しいことは何も知らない。
行けば、少なくとも、どんな家庭で育ったのかくらい分かるはず。

「行きます」


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