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危険な香りに誘われて
第2章 7年後
甥っ子雄介の誕生日会をすることになっていた週末。
真紀は、電車で実家へ向かっていた。市内から快速乗っても小一時間掛かる。
暖房が効き過ぎて暑い。真紀は、トレンチコートを脱いで腕に掛けた。

扉の端っこで電車に揺られながら、外の景色を眺めていた。
川沿いに桜並木がずっと続く道が見える。
あと一ヶ月もすれば見事なほど、あの道はピンクに染まるだろう。

手に持っていたスマホからメールの着信音が聞こえた。兄からだ。
スマホやLINEが普及しているご時世に、兄は、未だガラケーで、メール派。
いくらLINEを勧めても、俺の勝手だ、ほっとけの一点張り。

どうせ、ケーキの追加をしろとか、酒足りないから買ってこいとか、そんなことだろう。メッセージを確認すると。
『雄介がインフルエンザになったから、今日は、中止だ。移るとやばいから来るな』

病気なら仕方ない。
恋人の修平と同棲しているマンションに帰ることにした。
玄関に、見覚えのある男物のスニーカーがきちんと揃えて置いてある。
そう言えば、友人の夏樹が来るって言っていたっけ。そんなことを考えながら、真紀は、自分の靴を脱いで、夏樹の横に並べた。

「ただ今」

中へ入ってリビングへ行くと修平も夏樹の姿も見当たらない。

「あれ?」

靴があるのに?
首を傾げ、キッチンに目を向ける。
微かに温かい夏樹専用のマグカップが、さっきまでいたことを証明していた。

脱いだコートと鞄を置きに寝室のドアを開けようとした時だった。部屋の中から漏れ聞こえる喘ぎ声に耳を疑った。
ドアにぴたりと耳をくっつけて様子を伺う。

「あっ、あっ、いい。そこっ、もっと」

まさか、私がいない間に女でも連れ込んだの?
真紀は、息を殺し、ドアノブをそっと握った。

「あっ、あっ。気持ち良いっ」

「俺もだ」

10㎝ほどドアを開け、その隙間から中をのぞくと。

一糸まとわぬ姿で二人の男が、絡みあっていた。





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