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危険な香りに誘われて
第10章 やっぱり虎
マンションまで、歩いて帰らせるわけにはいかないと、おんぶして歩く賢也の背中で、真紀は、鼻をすすった。

「なんか、冷たいぞ。鼻水つけたな」

「ちがっ、涙だよ」

「これに懲りたら、夜一人で出歩くのは、やめるんだな」

「・・・・まだ、10時過ぎだったし危ない時間じゃないもん。それに近くのコンビニだし。すぐ帰ってくるつもりだったから」

「ったく、スマホくらい持って出ろよ」

「だから、ごめんってば」

賢也の背中におでこをくっつけた。風呂に入ったはずなのに、汗のにおいがする。賢也が、助けに来てくれなかったら、どうなっていたか。考えるのも怖い。

「助けに来てくれて、ありがとう」

もっと早く、風呂から上がっていれば。もっと早く、見つけていれば。
他の男が、真紀の身体に触れた。考えるだけで、腸が煮えくり返る。くそっ、二度とそんな真似出来ないように、玉も潰しておけば良かった。

「今度、俺の許可なく晩に出て行ったら、本当に監禁すっからな」

「だって、賢也、お風呂入ってたし」

「それでも、声掛けろ。一人で晩にフラフラすんなっ」

「だって」

「だっても、明後日もねぇわっ。口答えすんなっ。取り返しのつかないことになったら、どうすんだ。反省しろ」

背中からも賢也の気持ちが伝わってくる。すごく心配かけた。怒って当然だ。真紀は、賢也の背中に顔を埋めた。

「ごめん。・・・・鼻水ついた」

「おいっ」

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