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危険な香りに誘われて
第12章 皇帝
仕事が終わって駅からマンションへ帰る途中、見覚えのある車が視界に入り、真紀はドキッとして足を止めた。
黒いレクサス。
通りすぎようとした時、運転席から、白鳥が降りてきた。白鳥は、丁寧に頭を下げ。

「お乗り下さい」

後部座席のドアを開けた。
賢也が、血相変えて飛んできて、怒り狂った姿が、脳裏に浮かぶ。

「お断りします」

「今日は、旦那様から真紀様を料亭にご案内するようにと」

「白鳥さん?であってます?」

白鳥は、表情を変えずに小さく頷いた。

「賢也には、連絡されますか?」

「はい。旦那様から賢也様もお呼びするようにと申しつかっております」

真紀は、ほっと息を吐いた。どうせ、結婚の挨拶をしなくてはならない。しかし、勝手に行っていいのか。

「でも」

戸惑っていると。

「素直に従ってください。断れば、他の使いの者に、手荒く連れて行かれる事になります」

無表情な顔で言う白鳥の瞳だけが、どこか辛そうに見えた。
この前、白鳥は、賢也を坊ちゃまと呼んでいた気がする。どうして今日は、賢也様と呼ぶのか、気になった。


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