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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
父親が、経営するオカザキ株式会社は、表向き普通の中小企業。従業員の半数以上は、オカザキが、裏で何をやっているか知りもせず、真面目に働いている。賢也は、そこの営業部一課に放り込まれた。
「おう、坊主」
30にもなろうかって男を捕まえて、坊主はないだろう。賢也は、うんざりした顔を隠そうともせず、自分を呼ぶ男に振り返る。
オカザキに出入りしている、柴田だった。肩書きは、オカザキの下請け会社課長。パッと見、痩せ型の、どこにでもいそうな普通の中年だが、背中から足首まで、刺青を入れた根っからのヤクザである。
柴田は、嬉しそうに賢也の背中を軽く叩いた。
「いいもんやるぞ。ちょっと来い」
どうせ、ロクなもんじゃない。賢也は、天井を仰いだ。
柴田は、男子トイレへ賢也を連れ込み、誰もいないことを確認すると、ニヤニヤしながらポケットから封筒を取りだした。
「こいつが何か、分かるか?」
察しはついている。聞くまでもない。だが、賢也は、とぼけた振りをした。
「いえ、分かりません。何スか」
「分かってんだろ?こいつはな上物だ、そこらで売ってる混ざりものじゃないぞ。ルートは、言えねぇが、また欲しいなら格安で分けてやる」
柴田は、賢也のポケットに封筒を押し込むとタバコを取り出し口にくわえた。
「いや、俺は、いいスよ。こんなもん持ち歩くこと自体ヤバイっしょ?」
冗談じゃねぇ、迷惑だって言ってんだよ、おっさん。賢也は、ポケットから封筒を取り出して、柴田へ押し戻した。
「今回は、タダでやるってんだ。遠慮なく取っとけ」
賢也のポケットに封筒を突っ込むと、柴田は、用を足して出て行った。
「おう、坊主」
30にもなろうかって男を捕まえて、坊主はないだろう。賢也は、うんざりした顔を隠そうともせず、自分を呼ぶ男に振り返る。
オカザキに出入りしている、柴田だった。肩書きは、オカザキの下請け会社課長。パッと見、痩せ型の、どこにでもいそうな普通の中年だが、背中から足首まで、刺青を入れた根っからのヤクザである。
柴田は、嬉しそうに賢也の背中を軽く叩いた。
「いいもんやるぞ。ちょっと来い」
どうせ、ロクなもんじゃない。賢也は、天井を仰いだ。
柴田は、男子トイレへ賢也を連れ込み、誰もいないことを確認すると、ニヤニヤしながらポケットから封筒を取りだした。
「こいつが何か、分かるか?」
察しはついている。聞くまでもない。だが、賢也は、とぼけた振りをした。
「いえ、分かりません。何スか」
「分かってんだろ?こいつはな上物だ、そこらで売ってる混ざりものじゃないぞ。ルートは、言えねぇが、また欲しいなら格安で分けてやる」
柴田は、賢也のポケットに封筒を押し込むとタバコを取り出し口にくわえた。
「いや、俺は、いいスよ。こんなもん持ち歩くこと自体ヤバイっしょ?」
冗談じゃねぇ、迷惑だって言ってんだよ、おっさん。賢也は、ポケットから封筒を取り出して、柴田へ押し戻した。
「今回は、タダでやるってんだ。遠慮なく取っとけ」
賢也のポケットに封筒を突っ込むと、柴田は、用を足して出て行った。