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危険な香りに誘われて
第14章 門限
12時過ぎ、ドアの開閉の音を聞いて、真紀は、思わずベランダへ逃げ出そうとした。しかし、寸前でつかまり肩に担がれ、乱暴にベッドに放り投げられた。体がバウンドする。

「このアホがっ」

頭上に雷が落ちた。今回ばかりは、本気で怒っている。真紀は、正座し謝ることにした。

「ごめん」

「ホストクラブに行くなんて、いい度胸してんじゃねぇか」

「違うんだって。知らなかったんだよ」

「んで、高額請求かよ。何で、そうなったか説明しろ」

スペイン料理の店で葉月から声を掛けられたこと、ホストクラブへ連れて行かれ、葉月が消えたことを説明すると、賢也は、飽きれたと言って天井を仰ぐ。

「あほか。思いっきり、ひっかけられてんじゃねぇか」

「みたいですね」

ヘラッと笑っている真紀の態度、全く反省しているように見えない。襲われそうになったのは、これで二度目。本当に分かっているのかどうかも怪しい。もう我慢の限界だ。

「笑いごとじゃねぇっ。俺がもう少し行くの遅かったら、お前ら、あのおっさんらの餌食になってたんだからなっ。分かってんのかっ」

声を荒げ、唾が飛んだ。

「ごめんってば」

「絶対許さねぇ。明日からお前の門限6時。それ以降は、外出禁止」

「冗談きついよ。仕事終わって帰ったら6時半だよ」

「辞めればいい」

「賢也っ」

「文句は、一切きかねぇ。ひと月以内に辞めろ。その間だけ門限6時半にしてやる」

「待ってよ、そんな勝手なこと」

「返事は」

「賢也。もう、こんなことしないから」

「返事しろっ」

「は、はいっ」

心臓にビリビリと電気が走る。賢也に今、何を言っても聞き入れてもらえそうもない。真紀は、目を閉じた。
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