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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
失敗した。賢也は、帰宅する車の中で、自分のとった行動を後悔していた。
何で、一人で行かなかった?
真紀のことになると冷静でいられなくなる。先に感情が走って、自分が抑えられなくなる。

いつものように金を落とす為、飲み屋に出向いていた時、真紀からのLINE電話に気づいた。電話に出たが、誰かと会話している声ばかり聞こえる。
かばんの中に入れっぱなしのスマホ。何か当たった拍子に誤作動で電話が掛かったのか。切ろうとした時。

『おい、奥へ連れて行け』

『きゃーっ、痛い。乱暴しないでよっ』

『助けてっ』

電話の向こうから真紀の悲鳴が聞こえ、全身の毛が逆立った。
何か、ヤバイことに巻き込まれたらしい。酒の席だということも、広川たちがいることも忘れ、スマホを耳に当て、電話の向こうで起きていることに集中した。
酒のお代りを作ろうと声を掛けてきたホステスを睨みつけ。

「向こうへ行け」

追い払った。

真紀が、助けを求めている。だが、どこへ行けばいいのか。苛立ちだけか、どんどん募っていく。くそっ、どこにいるのか教えろよ。

『ははっ。濡れてきたで。お前、感じてるんか。犯されてこないに濡らして、恥ずかしい女やな。どんだけスケベやねん。待っとけよ、天国いかせたるから』

『やめてっ。お金払うからっ。やめてーっ』

ブチッと賢也の血管が切れた。どこのじじいか知らねぇが、ぶっ殺してやる。賢也は、席を立ちあがった。

「おい、どうした賢坊」

「女が、ヤバイ奴らに捕まった。助けに行く」

「面白そうじゃねぇか」

ゆらりと金剛力士が立ちあがる。

「一緒に行くぞ」

首を回したり指をポキポキ鳴らしている広川と吉田と違い、板倉だけは、びびっていた。

「無茶せんで下さいよ。警察が介入したら面倒なことになりますよ」

「びびんな板倉。短時間で済ませる」
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