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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
賢也は、慌てて家へ戻った。キッチンからいい匂いがしている。真紀は、何事も無い様子で、夕食の仕度をしていた。その姿を見て、賢也は、ホッと息をついた。

「お帰り」

笑顔が賢也に向けられる。自分が狙われていたなど、知りもしないで。
全ては、自分のせいだと、賢也は、自分を責めた。自分が愛してしまったばかりに、真紀は、常に危険に晒されている。そう思うと胸が痛み、苦しくなる。

「あのよ、なんか、変わったことなかったか?」

「何で?」

「いや、最近物騒だから、変な奴とかいなかったかなって」

真紀は、クスクス笑った。

「賢也って、意外と心配性だよね」

「笑い事じゃねぇって。いいか、変な車とかいたら、警戒しろよ」

「わかった、わかった。もう、いいよ。それよか今日ね、商店街の肉屋で、アキレス売ってたよ。賢也、アキレス好きだよね」

危なく、この笑顔を消すところだった。真紀の頬を撫で下ろす。

「呑気な奴」

「あれ、ねぇ、どうしたの?首んところ切れてるよ」

「大したことねぇよ。それより、久しぶりにフルパワー充電っ」

強く抱き締めて唇を重ねた。




賢也の頭の中で根津の言葉がこだまする。


『身内に暴力団員がいる。それが、家族にどんな迷惑を掛けるか、君が一番よく分かっているんじゃないか』


『彼女が大切なら、辛い選択肢も考えることだ』

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