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危険な香りに誘われて
第19章 最期の夜
環状線を外れると車の数もぐっと減る。賢也は、減速し、クラウンが追いつくのを待った。
追い越し車線を走ってきたクラウンの窓が開き、男が再び銃口を向けてきた。

「うおーっ。あぶねぇオモチャ持ってんじゃねぇーぞっ」

ハンドルを右に切り、車体を寄せ、体当たり。後部座席の男がシートにひっくり返る。
賢也は、加速し、クラウンの前に移動するとブレーキを踏んだ。慌てたクラウンの運転手が、急ブレーキを踏む。クラウンは、回転しながらガンッガンッと激しく、壁やガードレールに車体をぶつけ、停止。

チカチカとハザードランプを点滅させているクラウンが、ミラー越しに見える。
賢也は、首を軽く回し、関節を鳴らした。

高速道路を降り、ガソリンスタンドを目にすると、車を乗り入れ、愛車を確認する。
ドアがへこみ、傷だらけで塗装も剥がれている。
しゃがみ込んで、頭をガシガシかきむしり、嘆いた。

「あーっ、くそっ。傷いっちまったじゃねぇかっ」

落ち込んでいると、車の中からスマホの着信音が聞こえ。
相手が誰かも確認せず、電話に出た。

「うるせぇなっ、今、忙しいんだ。何の用だっ」

『賢坊、どこにいんだよ。何度も電話したんだぞ』

吉田?珍しく、覇気がねぇな。電話を遠ざけても聞こえるほど、いつもデカい声なのに。賢也は、眉間にシワを寄せた。

『ちくしょっー、どこのどいつだっ。ぶっ殺してやるっ』

『広っ、静かにしてくれ』

喚いているのは、広川なのか?

「何かあったんですか」

吉田の鼻をすする音が電話越しに聞こえた。

『すぐ、こっちへ来てくれ。社長が・・・社長が、殺られちまった』

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