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危険な香りに誘われて
第19章 最期の夜
稲光が闇を裂き、夜の街を照らす。轟音と共に降り出した雨が、フロントガラスを叩きつける。賢也は、睨むようにミラーへ視線を向けた。
病院から、一定の距離を保ち、着いてくる車がいる。気のせいじゃねぇな。
マンションへ帰るのをやめ、右折し、阪神高速道路の入口へ向かった。

雨の阪神高速、いつもより控え目な走りをする車が多い。間に一台車を挟んだまま、白い車が見え隠れする。
相手を確かめようと車線を変更し速度を落とす。古いクラウンが、同じように車線変更した。

賢也は、スピードを加速させ、大型トラックや乗用車の隙間を縫うように車線変更を繰り返した。追いかけてくるクラウン。
賢也は、ハンドルを切り、トレーラーと大型トラックの隙間を抜け、クラウンの後ろに張りついた。

助手席の男が、見失った賢也を探して、頭を左右に振っているのが見える。パッシングすると、クラウンは、隣の車線へ移動した。
助手席の男が後部座席へ移動する。降りしきる雨の中、窓を開け、至近距離から賢也に銃口を向けた。

「チャカ?マジかよ」

賢也は、アクセルを踏む足に力を入れた。
環状線を抜け南下。クラウンが、しつこく追ってくるのをミラー越しに見て、賢也は、チッと舌打ちした。



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