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危険な香りに誘われて
第22章 裏切り者
繁華街から少し外れた通りにスナックとクラブの看板ばかりが目立つビルが建ち並んでいる。
賢也たちは、店の看板を見上げた。

「吉田さんは、外で待機していてください」

「逃がすことはねぇと思うが、念の為だ」

吉田は、胸ポケットからタバコを取り出すと口に咥えた。

「んじゃあ、のんびり一服させてもらうとするよ」

二人は、エレベーターに乗り込んだ。

「そういや真紀ちゃんは、元気か?」

「・・・・普通ですよ」

無表情で素っ気なく返す賢也を見て、広川がクッと笑う。

「で、今夜は、何を買って帰るんだ?」

嫌味を言う広川を睨み、賢也は、左腕を摩った。
連日ケーキ、寿司、有名店のカツサンドと、夜中に手土産を持ち帰えり、ご機嫌取ろうとしていたのだが、昨夜とうとう真紀が切れた。豚になる、いい加減自由にしろと喚き、賢也の腕に噛みついたのだ。

ベッドへ連れ込み、セックスで誤魔化した。だが、そんな手は、毎回使えるはずも無く。朝から真紀に、いつになったら外へ出してもらえるのか泣きつかれ、週が明けたらと言わざるを得なくなった。

「何も買いません。ただ、今夜は、なるべく早く帰るって約束したんで、用事をさっさと終わらせたいんですよ」

涙目で、早く帰ってきてくれと頼まれたら、何を置いても帰りたくなる。

「賢坊、お前、本当に真紀ちゃんに弱いな」

「・・・・言われなくても、自覚してますよ」

賢也は、力なく笑うと、エレベーターを降りた。

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