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危険な香りに誘われて
第22章 裏切り者
「テメェみてぇのが、うちにいるのかと思ったら情けねぇわっ」

広川は、何度も革靴で正木の背中を踏みつける。

「うっ、ぐっ、がはっ」

「くそったれがっ」

背中を折り曲げ、のたうち回る正木が、賢也に救いの手を伸ばす。

「ひっ、ひっ、ひっ、助けっ、うげっ」

「広川。もうよせっ」

「こんな奴に、殺されちまって、賢坊は、悔しくねぇのかよっ」

こんな、広川を見たのは、初めてだ。
はぁはぁと肩で息しながら顔を真っ赤にし、涙を浮かべている。

「くそ野郎っ」

葬式で泣いていた連中と同じで、お前も俺の知らない親父の背中を見てきた一人なんだな。
賢也は、ソファに座って、広川の気が済むまで、黙って見物することにした。

引っ掛かることが一つある。
南条は、何故、親父が強盗殺人に関わっていると思ったんだろう。

俺たちは、何か見落としているんじゃないだろうか・・・・・。

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