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危険な香りに誘われて
第25章 愛妻家
「おはようございます」

賢也の実家へ引っ越して早々のこと。
若い男が、玄関先で、仕事へ行く賢也を見送りに来た真紀に頭を下げた。
新しく雇ったのか、賢也を迎えにきたと言う。

どこかで見たことある。
どこだっけ?口元に手を置き、首を傾げていると後ろから気配を感じた。

「真紀、紹介しとくわ。こいつ西島耕太」

賢也は、靴ベラを手に柴田の磨き上げた皮靴に足を差し入れる。

「西島耕太さん?」

「覚えていますか?」

真紀は、眉根を寄せた。名前には、全く聞き覚えがない。
でも、どっかで見たことあるんだよなあ。
賢也の会社にいた男たちを思い浮かべるが、ヒットしない。
こめかみに人差し指を当てて考えていると。

「翼です」

「翼?」

「忘れちゃいましたか。ホストクラブで、接待させてもらった翼です」

鼻の下を指でこすってヘラヘラ笑っている。
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