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危険な香りに誘われて
第4章 捕獲
次の土曜日、真紀は、朝からバタバタしていた。
衣類を詰めた段ボールを引越しセンターの業者に引き渡し、ゴミの残った部屋の掃除に汗を流す。すっきりした部屋を眺めていると修平が、顔をのぞかせた。

「終わった?忘れものは、無い?」

何度も確認済だ。真紀は、洗面所やキッチンを最終確認し、納得したように大きく頷いた。

「大丈夫。もしなんか出てきても捨てて」

「分かった。じゃあ、行こうか」

修平は、軽自動車のキーを手にした。

「向こうは、大丈夫なの?」

「うん。マンションの持ち主と知り合いで、代わりに荷物受け取ってくれるって言うから、お願いしたの」

修平のマンションから車で走行20分。新しいマンションが見えてきた。

「ごめんな、真紀。こんなことになって、本当に、俺」

修平は、優しいから、ずっと気にしていたんだろう。真紀は、笑って修平の肩を軽く叩いた。

「もう、何回も言わないでよ。一緒にいる間は、結構楽しかったよ」

「俺も。本当に、女の子の中では、真紀が一番好きだったよ」

「ありがとう」

路肩に車を停止させ、ドアに手を掛けると修平が、手を差し出した。

「元気で」

半年ほど一緒に暮らしただけ、長い付き合いでもないのに、お別れだと思うと、ちょっと寂しい。修平とは、上手くいかなかったけど、でも楽しい思い出もたくさんある。本当に彼は、優しい人だった。差し出された手をギュッと握り締めた。

「修平も元気で」

「じゃあ、頑張って」

「バイバイ、修平。今まで、ありがとう」

「真紀、ごめんな。本当にごめん」

修平の声を聞きながら、真紀は、振り返ることもなく、マンションの敷地の中へ入って行った。




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