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危険な香りに誘われて
第26章 嵐
「おい、誰が降りてきたか分かるか?」

「えっ、う、うん。えっと・・・若頭?間違いない、若頭だよ。お花持っている」

こんな田舎で墓参り。いったい誰のだ。

「あんま、じっと見るなよ。さりげなくしろ」

「う、うん」

吉田は、こめかみに汗を浮かせ、緊張感を走らせた。

「あっ、誰か来た。ホウキ持ったおじさんと喋っている。若頭とおじさん、霊園の中へ入って行くよ」

「芦谷は、まだいるのか」

「うん、車に凭れてタバコ吸っている」

芦谷がそのまま、残っているなら、隠れて堀田の様子を見に行くことは出来ない。
吉田は、チッと舌打ちした。

「他に誰かいるか」

「ううん、いない」

堀田が共を一人だけ連れ、遠く離れた田舎の霊園に訪れる、有り得るだろうか。
墓参りを終わらせ、ベンツが駐車場を出ていくのを待つ間、吉田は、考えを巡らせた。

「帰りましたよ」

「そうか」

ホッと息をつき、車を降りる。墓地へ行き、堀田の参った墓を探した。

「ねぇ、これじゃない?」

加賀が、吉田を呼ぶ。
濡れた墓石、菊の花が添えられ、ステンレス製の線香立てからは、束になった線香が煙を上げている。
これだ。
墓石に刻まれた名前を見て、吉田は、驚き呟いた。

「急いで大阪に帰るぞ」

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