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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
タクシーを止め、飛び乗ると家路を急いだ。
早く帰って真紀を抱きしめたい。



真紀には、色んなことを我慢させてきた。
これからは、何でもしてやれる。

疎遠になっていた身内や友人を呼んで、結婚式を挙げよう。
まずは、明日にでも真紀の実家へ行き、結婚と子供が出来たことを報告するのが先だな。


賢也は、自分の掌をじっと見つめた。
手の中には、自由と希望が満ち溢れている。
ああ、やっと手に入れた明るい未来。

幸せが逃げないように、掌を握りしめた。


「お客さん、着きましたよ」

タクシーを降り、見上げる家。

子供の頃から、早く出て行くことばかり考えていた。
それが、今では、真紀が待っていると思うだけで家路を急いでしまうほど、恋しい我が家になっている。


賢也は、玄関に足を踏み入れ、思わず笑みを零した。


「お帰りなさい」


「ただいま」


愛しい妻を抱きしめ。

今夜も甘い香りに酔いしれるのだと思い。

唇を重ねた。

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