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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
賢也は、店を出るとスマホを手にした。
真理が、自分たちをいつも気にかけていることは、根津を通して聞いていた。

『無事か?』

第一声がそれか。今日のこと、根津から聞いていたんだろう。心配していたことが伺える。

「ピンピンしているよ」

『良かった』

安堵のため息が聞こえる。

「心配かけたな」

『本当だよ。ハゲたらお前のせいだからな』

「千佐っちゃんに、しばかれるな」

「ハハハ、子育てしているせいか、パワーアップしているよ』

温かな友の声を聞いて、嬉しさがこみあげてくる。

『電話してきたってことは、戻ってくるってことだよな』

賢也は、目を閉じ。

「ああ」

『ずっと待ってたんだぞ。お帰り』

「ただいま」

話したいことは山ほどある。だが、感極まって、それ以上言葉にならない。
涙が零れそうになるのを堪えることしか出来なかった。


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