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危険な香りに誘われて
第4章 捕獲
与えられた洋室は、10畳ほどのスペース。
そこにシングルベッドを運んでもらった。
鍵も掛かる。とりあえず、寝ている時に襲われる心配は無さそうだ。

しかも、破格値の家賃は捨てがたい。賢也の言う通り、住むには最高の条件が揃っている。
出ていくにも、お金がいる。引っ越し代、敷金、礼金、他に電化製品も買うとなれば、かなりの資金が必要。真紀は、部屋の入口で腕を組み、不機嫌そうにしている男に振り返った。

「やっぱり4万円で、この部屋借りることにする。お風呂とかキッチンとか色々共有で使わせて」

「別に家賃なんていらねぇよ」

「やだ。家賃払わなかったら、対等にものも言えないし。ただの居候になっちゃう」

「大家と住人なんて、つまんねぇ関係より、もっと楽しい関係になりてぇんだけど。なぁ、さっきの続き」

「つまんない関係で結構。さっきのキスは、指折った慰謝料だからね」

手に入ったと思った女は、また距離を取ろうとしている。賢也は、軽くため息をついた。
だが、真紀は、ここに住むと言っている。チャンスは、いくらでも作れる。賢也は、思い直した。

「これは、同棲じゃなくて、同居だから」

腰に手を置き、同居を強調する真紀を見て、賢也は笑った。その主張は、聞いてやれそうもない。

「本当、面倒クサイ女だな」

「何よ」

「いや、可愛いって言ったんだよ」

真紀の顔が赤くなった。

「宜しくな」

賢也が、握手を求めるように手を差し出した。真紀が、何気なくその手を握ると。

「えっ」

気づいた時には、賢也の腕の中で、唇を奪われていた。

「隙みせんなよ。遠慮無く食っちまうぞ」

やっぱり同居は、早まったかもしれない。真紀は、ゴクリと唾を飲んだ。

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