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危険な香りに誘われて
第5章 虎の真紀
「は、早いね」

「ああ、目が開いたからな」

トイレへ入り用を足す賢也を意識しながら、肩まで伸ばした髪をシュシュでまとめ急いで顔を洗った。
賢也は、トイレから出てくると真紀の隣に立ち、蛇口のレバーを上げた。
でかい。鏡に映る二人を見比べて、賢也の背の高さを改めて実感。
間近で見上げると首が痛くなるほど。

「何㎝あるの?」

「ん?背か。186かな。使っていいか」

「う、うん。どうぞ」

「お前は、チビだな。150あんのか?」

賢也が、笑って真紀の頭に手を乗せた。

「あ、あるよ」

「ふーん」

洗面台の鏡扉にかけた賢也の手が止まる。
じっと真紀を見下ろしている。

「何?」

なんか着いているのかな。真紀は、鏡をのぞき込んだ。

「お前・・・・」

「だから何」

「ちちも無いんだな」

「ギャッ」

シャツに尖ったものが浮き出ている。
真紀は、慌ててシャツの胸元を引っ張った。


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