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危険な香りに誘われて
第5章 虎の真紀
「見ないでよっ」

賢也に背を向ける。

「見せたのは、お前だろ」

「違うもんっ」

「偽ちちか」

半笑いの声。
気にしているのに。どうして、平気で、そういうこと言うんだろ。

「今のブラは、寄せて上げてが、普通なのっ」

逃げるように廊下へ出た真紀を賢也が後ろから抱きすくめる。

「ギャッ。何すんの」

真紀は、胸を隠すように背中を丸めたまま、賢也の手から逃れようと暴れた。

「いや、どのくらいあんのかなって。ちょっと触らせろ」

「やだ、やだ、やだ。変態っ。触ったら減るっ」

「減るかっ。いいから手、離せ」

「セクハラ親父っ」

「誰が、親父だよ。ホントに口の悪い女だなっ。ほら、手は、ここだっ」

真紀を壁に押し付け、壁に両手をペタリとつかせ、上から手を重ねた。

「離すなよ」

甘い囁きには、ほど遠い、脅すような声が耳元で響く。

「やだっ。やっ、何?」

首のつけ根辺りに賢也の息遣いを感じ、真紀は、首をすくめた。
賢也は、白く柔らかな肌に唇を押し当て、強く吸いついた。
所有の証。だが、物足りない。突き刺すように賢也は、歯を立てた。

「んっ、痛ーっ」

逃げ場もなく、壁に頬を押しつけることしか出来ない真紀の上半身が反り返る。

屈服しろと言わんばかりの行為。
「いい子にしてろよ」低い声で言われ、真紀は頷くことしか出来なかった。


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