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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。
「ハァ…」
目の前に広げられた本のページを眺めながら、リリアは小さくため息をついた
もうこれで今日何回目だろうか
全く頭に入らない状態でページを捲り、また無意識のうちに息を吐く
「……おい」
頭にずしりと重みを感じ、背後に立つミゲルを振り返った
「午前中にその巻を読み終えるよう言ったはずだが?」
リリアの頭に乗せた次の巻を机に置きながら隣に腰掛けるミゲル
「昨日まであんなに読み耽っていた癖に、一体どうした」
相変わらず滅多に表情を変えない彼だが、初めの頃より随分と話せるようになった
人の側に仕える身だからか、ミゲルは意外と聞き上手だ
「あの人が何を考えているのかと思って……」
「またその話か。言っておくが、あいつは別段何を考えているわけでもないと思うぞ。
一見すると理性的だが、特に自分にとって大切なものになればなるほど自分を見失う」
「大切なもの……」
昨晩のレオンの眼差しが思い出される
「それってどういう……」
「……っと、お邪魔だったかな?」