この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。
書庫の扉を開き、一人の男が入ってきた
リリアと同じ、金髪に青い瞳を持つ美しい男
いや、妹のフローラと同じと言うべきか
「こんな処に兄上の子飼いが二匹……見栄えは良いが中身は汚い」
ジェーニオは馬鹿にするように笑いながら二人に近付いてくる
対称的にミゲルは無表情のままさっと立ち上がった
「失礼致しました、ジェーニオ様。今片付けて……」
「そんなに怖がらなくても何もしないよ」
そんな彼を遮るようにジェーニオはテーブルに手をつく
「お前もこの子も、本当に綺麗だと思うんだけどなぁ……やっぱりそこは兄弟なのかな。ま、僕は野蛮人を側に置く趣味はないけど」
何が可笑しいのか、ミゲルを鼻で笑うと今度はリリアの方に視線を向けた
「君は特に美しいから、孤児だけど特別に僕に仕えてくれてもいいよ?」
「……」
なんだろう、この不快感
尊大で、人を人とも思わぬこの態度
「お断わりします」
ジェーニオの笑みがぴくりと引きつる
だが何を言うわけでもなくそのまま彼女の髪に触れてきた
「見たところもう子供ではないようだけど……下ろさせているのは兄上の指示?」