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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。



書庫の扉を開き、一人の男が入ってきた

リリアと同じ、金髪に青い瞳を持つ美しい男

いや、妹のフローラと同じと言うべきか



「こんな処に兄上の子飼いが二匹……見栄えは良いが中身は汚い」



ジェーニオは馬鹿にするように笑いながら二人に近付いてくる

対称的にミゲルは無表情のままさっと立ち上がった



「失礼致しました、ジェーニオ様。今片付けて……」

「そんなに怖がらなくても何もしないよ」



そんな彼を遮るようにジェーニオはテーブルに手をつく



「お前もこの子も、本当に綺麗だと思うんだけどなぁ……やっぱりそこは兄弟なのかな。ま、僕は野蛮人を側に置く趣味はないけど」



何が可笑しいのか、ミゲルを鼻で笑うと今度はリリアの方に視線を向けた



「君は特に美しいから、孤児だけど特別に僕に仕えてくれてもいいよ?」

「……」



なんだろう、この不快感

尊大で、人を人とも思わぬこの態度



「お断わりします」



ジェーニオの笑みがぴくりと引きつる

だが何を言うわけでもなくそのまま彼女の髪に触れてきた



「見たところもう子供ではないようだけど……下ろさせているのは兄上の指示?」


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