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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。



「やめて」



リリアの手がそれを弾く

孤児であるのは事実だが、少し前まで貴族の娘だった身

ジェーニオのこの態度に黙っていられるはずもなかった



「私は貴方なんかとは身分が……」

「リリア! ジェーニオ様にそんな口を利くな」

「……っ」



勢いで自分のことを暴露しそうになった彼女に、ミゲルは小さく首を振る

一方のジェーニオは二人の言葉に少し首を傾げていた



「何か隠し事でもあるの?」

「……いいえ。その娘が身の程知らずなだけです」

「ふぅん……まぁいいけど。そもそもお前みたいなのがこの屋敷にいること自体、身の程知らずだと僕は思うけどね」



ミゲルの顎を掴み、眺めるように動かす



「もう少し肌が白くてその血が穢れていなければ……」

「たとえそうだったとしても、そいつはくれてやらんぞ。ミゲルは私のものだからな」



いつの間に来ていたのか、入口の木枠にレオンが寄りかかってこちらを見ていた



「兄上、何か御用ですか?」

「ああ、お前ではなく二人にな。お前こそここに何をしに来た」

「別に。新しいコレクションをどこに置こうかと屋敷を廻っていたんですが」


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