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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。
「彼女?」
ミゲルは顔をしかめておばちゃんの指す方を振り返った
会話に入れずおろおろしていたリリアは急に注目されて慌てている
「ああ、あいつはそんなんじゃない。レオンがシエラから連れてきた孤児だ」
「おやそうかい。相変わらず優しいねぇ。
それにしてもべっぴんさんだ。どっかの貴族のお嬢様かと思ったよ」
「は、まさか。
じゃあおばちゃん、また」
ミゲルはそこで会話を切り上げるとリリアを連れて人混みから離れた
「あの……」
「今は何も言うな。誰が聞いているか分からない」
そして市場を少し遠くに見る場所に腰掛けた
「……」
「道端に座るなんてあり得ない、か?」
「だって服が汚れるわ」
「大した服じゃない。気にするな」
そう言われてリリアは渋々ミゲルの隣に座る
すると今度はナイフを取り出し、貰ったオレンジの皮を剥き出したではないか
「え、まさかそれ……ここで食べるの?」
「何事も慣れれば問題ない」
リリアは内心絶対に嫌だと思ったが、既に半分剥かれたオレンジを差し出されては仕方ない
おずおずとそれを受け取ると、顔に近付けその香りを嗅いだ