この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。
「フェリペ様って、さっきあの人たちが言ってた……」
「ああ。あの方が亡くなったから俺はあいつの従者になった」
「……」
話が重すぎて何も言えない
"だからあの人はあんなに真剣に……"
大切な者を失くした気持ちがよく分かるのだろう
「その……お兄様もご病気で?」
「いや。フェリペ様は何者かに殺された」
「…っ……」
「だからあいつは簡単に街に出ることが出来ない。あんなに人と接するのが好きな人間が」
彼のーーー彼らの辿ってきた道は、自分が思っていたよりも遥かに険しいもののようだった
「レオンは今でこそ学があるが、兄のフェリペ様と違って大学には行っていなかった。というより、十を過ぎた頃から既に海に出ていた。
だからあいつは当主にはならないと言った。当時まだ十一だったジェーニオ様の方が前途があると推してな」
リリアはあの嫌な男とそれに対する市民の態度を思い出す
「それは……どう考えても失敗だったんじゃ……」
「お前、それを屋敷で言うなよ。面倒な敵を作りたくないならな。まぁ今はいいだろう。
それにあの方には性格以外にも問題があった」
「……?」
「よく考えてみろ。あの兄弟、似ていると思うか?」
"どちらも整った顔立ちだとは思うけど……"