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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。
リリアが考えている間にミゲルは皮だけになったオレンジを道端に放り投げる
すぐに烏が数羽寄ってきてそれをつつき始めた
「庶子って…言ってたわね……」
それを見ながらリリアはおもむろに口を開いた
「そうだ。あの二人は……というかフェリペ様とレオン、ジェーニオ様とフローラ様は母親が違う。下二人の母は東海岸の貴族の出身だ」
それでやたらに出自にこだわるのか
「しかもレオンの母親は亡くなっていない。ジェーニオ様は妾の子だ。一応嫡子ということにしてあるがな」
「どうして遠くの貴族の方が愛妾になんて……」
「表面上は後妻だ。東の都市、そして貴族と繋がりを持つための結婚……まぁ口は悪いが良い女だから、単なる政略結婚には留まらなかったろうがな」
純粋過ぎる環境で育ったリリアにとってそういった話は衝撃的だった
"妻が生きてるのに結婚するなんて……"
「酷い、と思うだろう? 確かにな。フェリペ様が亡くなるまでシャルロット様……レオンのお母上も相当争ったが、今はもう……」
ミゲルは途中で言葉を切り、首を振った
「あの方には何も分からない」