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果てのない海に呑まれて
第11章 救い
陽が傾き出し、市場を行き交う人が段々に減ってきた
商人たちも布を下ろして店仕舞いを始める
「そろそろ帰るぞ」
ミゲルがそう言って立ち上がり、リリアもそれに続いた
「これどうしたら……きゃっ!」
食べ終わったオレンジの皮の始末に困っていた彼女の傍を、何かがサッと通り過ぎた
「な、なに?」
訳も分からず足元をきょろきょろと見回す
最後にふと前を見ると、一人の子供がミゲルの腕の中でもがいていた
「放せっ! 放せよっ!」
「そんなもの食べても腹の足しにはならないだろう」
「お前にはカンケーねーだろっ! こんなんでも食わなきゃ生きていけないんだよ!」
見た目には七、八歳だろうか
小柄なその男の子はミゲルから逃れようと暴れるが、ミゲルはびくともしない
「お前、名前は」
むしろ落ち着いた様子で質問など始める始末だ
「はぁっ? なんでそんなこと……」
「良いから答えろ」
ミゲルの低い声に気圧されてビビる子供
“子供相手にそんな言い方しなくても……”
そう思うがリリアの方も怖くてそんなことは言えない