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果てのない海に呑まれて
第12章 喧嘩するほど–––



「お前は私を忙殺するつもりか!?」

「ちゃんと仕事をしていればこんなことは言わん。だが最近のお前ときたら、リリアとばかり過ごして全く書斎に入っていなかったじゃないか。やらなきゃならんことが山積みだぞ」

「ならお前がやればいい」



レオンはかなり苛立ったような顔でミゲルを睨んでいる

この言葉にはさすがのミゲルも少し表情を崩した

とはいっても、片方の眉がぴくりと動いただけだったが。



「いい加減にしろ。俺にも仕事があるんだ」

「市場に行って民と話すだけなのに仕事といえるのか?」

「ただ話すだけではない。密取引や法外な値段でのやり取り、不審な人物がいないかにも注意を払って……というかそもそもお前の命令だろうが」

「そうだったか?」



レオンは特に悪びれる様子もなくそう言った



「とにかく、お前の言う通り午前中はずっと仕事をしていた。少しくらい歩き回ったっていいだろう!?」

「駄目だ」



ミゲルは全く聞き入れる様子もない

レオンの言うことを冷たく却下すると背を向けて書斎の出入り口へ向かった



「リリアが待って……」

「待ってない。しつこい男は嫌われるぞ」



そして近くにいた別の側近に



「いいか、絶対に出すなよ」



と言うと自分も仕事をするべく外へ出て行った


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