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果てのない海に呑まれて
第12章 喧嘩するほど–––
木々の葉は秋らしく色付き出し、どれも熟れた木の実を身に付けている
そしてそれを求めて小鳥やリスなどの小動物が集まってきていた
頭上からはその全てを包み込むような柔らかい日の光
「素敵ね……」
この風景を楽しむのも、鹿狩りの趣向というものなのだろう
だがリリアはこの穏やかな空間を血で染めるなどあってはならないと余計に思うのだった
そんな彼女の気持ちも虚しく、猟犬がはっと顔を上げ大きく吼えながらどこかへ走ってゆく
「見つけたか!」
レオンは嬉しそうに声を上げると、また彼女に断りなく馬を急発進させた
風を切る音が耳を塞ぐほどの勢いにリリアはもう何も考えられない
ただひたすらに目を瞑って彼の胸に顔を埋めていたーーー
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一方その頃、ファルツ家ではーーー
「ここで何をしている」
屋敷に戻ったミゲルがリリアの部屋の前で右往左往する男に冷たく声を掛けていた
「ミゲル! ちょうど良かった! 今レオン様とリリア様がお取り込み中で……あまりに長引いているんでどうしようかと思っていたんだ」
「取り込み中?」