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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
「そんな格好で、何をやっているの」
リリアは怒りを含んだ笑みを浮かべながら相手に尋ねた
それに対してレオンは軽く肩を竦めるだけ。
「言っていなかったか? 今日は毎年このアウスグライヒで行われる祭りの日だと」
「……それは聞いていたけど、どうしてそんな格好をしているのって聞いたのよ」
「いつもの格好で行ったら目立つだろう」
「行くつもりなの!?」
ニノと出会ったあの日を含めミゲルとは何度か街に出ているが、レオンがついてきたことは一度もない
少なくとも、彼女がここに来てからは。
「何をそんなに驚くことがある?」
「だって…ファルツ家の人間はいつ暗殺されるかも分からないってミゲルが……」
「この街がまだ小さな農村だった頃からの伝統の祭りだ。市民の一人として参加しなければなるまい?」
「でも……」
“この前暗殺されかけたばかりなのに”
ふた月ほど前のあの恐怖を思い出す