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果てのない海に呑まれて
第1章 崩壊
「きゃあぁぁあぁ!」
夜の闇に、人の悲鳴が響き渡った
「何事……!?」
リリアは眠っていたベッドから跳ね起き、窓に駆け寄った
複数の黒い影が入り口から入ってくる
「リリア!」
「お父様! これは……」
部屋の戸を開けた父の手には代々ギスタール家に受け継がれてきた剣が握られていた
「分からん。外の見張りは皆やられた。とにかく逃げるぞ!」
わけの分からないまま父の後に付いて裏口へと向かう
屋敷内は突然の襲撃によって大混乱に陥っていた
「叔父様たちは!?」
「この中で見つけるのは不可能だ!」
先ほどよりも近くでまた悲鳴が上がる
どうやら侵入者たちが屋敷に火を放ったらしい
「リリア! さぁ早く!」
思わず足の止まった娘を父は必死に出口へと向かわせる
「あっ!」
だがそれも無駄なことだった
裏口には既に数人の男達が待ち構えていた
「くそっ……リリア、先に行け!」
「そんな、お父様!」
剣を構え、娘を背中に庇う
「早くしなさい! お前だけでも逃げるんだ!」
男が斬り掛かり、戦闘が始まった
父の必死の言葉に、リリアは泣きそうになりながらもその場を後にする
それが彼女の聞いた、父の最期の言葉だった