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果てのない海に呑まれて
第1章 崩壊
「ハァッ…ハァ…ッ…」
薄暗い道を懸命に走る
後ろから二人ほどの追手の足音が聞こえていた
“このままだと……追い付かれる!”
だが幸いこの街の道は入り組んでいる
一歩細道に入ってしまえばそう簡単には見つからない
リリアは十字路を右に曲がり、すぐまた左に折れた
ほとんど足元が見えないほどの暗い道
だがまだ油断は出来ない
そのまま追手を捲くまでひたすら走り続けた
「ハァッ…もう大丈夫かしら……」
港近くまで来てリリアはようやく足を止める
後ろを振り向いても人の気配はない
“でもこのままじゃいつ見つかってもおかしくないわ……”
夜明けまでまだ間がある
ずっと逃げ続けることは出来ない
“足が痛い……”
裏道の剥き出しの地面を裸足で走った為に所々血が滲んでいた
もう歩けない
そう思ったリリアは何処か安全な場所はないかと辺りを見渡し、港に停泊する船に目を留めた
周りを見ても船員や見張りは居なさそうだ
“少しの間お邪魔します……”
暗くて誰の船なのか分からない
ギスタール家のものであることを祈りながら、リリアは積み荷の置かれた部屋に座り身を潜めた