この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
「その布、誰かから奪ったものじゃないの?」
「……!」
彼女の問い掛けにレオンは言葉を詰まらせた
「……」
「ああ、そうだ。これは確か……フィナルの船にあったものだな」
代わりにミゲルが淡々とその質問に答える
「正当なやり方じゃなく……人を傷つけたり脅したりして今ここにあるのなら、私はそんなもの欲しくない」
「…そうか……」
はっきりとそう言うリリアにレオンは小さく返すと、布を青年に渡した
青年も察したようにそれを受け取る
「すまないな」
「いえ……仕方のないことです」
「他の奴にもここのことを勧めておこう。なに、少し値を下げればすぐに売れるさ」
そう言って笑うと背を向けてその場を後にした
リリアとミゲルが急いでそれを追う
彼の顔には先ほどと同じ、哀しげな影が現れていたーーー