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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
「それに私はドンではないし、これから先そうなることもない。今の案など父に一蹴されてしまうだろう」
「オレたちゃみんなレオン様がファルツを継ぐことを望んでる。ベルナルド様も変わってしまったし、ジェーニオ様には期待出来ねぇ」
「……」
レオンは何も答えずリリアから布を取り上げ、しばらく考え込むようにじっとそれを眺めていた
「……よし、この布、私が買おう。女を喜ばすことも出来ないケチな男とは違うからな」
「おい、どういう意味だそれは」
「いくらだ?」
ミゲルを無視して尋ねると、青年は驚きながらも考えていた値段を言い渡す
「ハハッ、確かに高いな、それは。だが女への贈り物としてはこのくらい普通だぞ。覚えておけ、ヘレーネの為にな」
「このっ…いい加減に……」
「ねぇ待って。申し訳ないんだけど……私、それいらないわ」
それを聞いて三人とも大なり小なり驚いた表情を浮かべた
「なんでだ? こんなん滅多に貰えるもんじゃないぜ」
「金の心配ならしなくて良い。これでもちゃんと……」
「そういうことを言っているんじゃないの」
理由を言うことに躊躇いがあるのか、リリアは目を泳がせ一旦唇を舐める