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果てのない海に呑まれて
第17章 細波
翌日、まだ陽も昇りきらないうちにリリアたちは屋敷を出ようとしていた
「出られそうか?」
「ああ、荷は全て積んだし、海の様子も問題ないということだ」
「よし、では出発しよう。リリア!
……リリア?」
返事がないのでレオンは顔をしかめて振り返る
リリアは少し離れた所で門の向こう側に見える海をぼんやりと眺めていた
「また寝惚けているのか? 全く……あいつの朝の弱さには困ったものだな」
近付こうとしたレオンの目に、門前に停まった一台の馬車が映った
ファルツの薔薇の紋章があしらわれたその馬車に見覚えのある金髪の男が乗り込もうとしている
「……ミゲル、リリアを起こしておいてくれ。私はジェーンに話がある」
「……了解した」
レオンが弟のもとへ行き、ミゲルはリリアの隣に並んだ
細波立つ海を見つめる彼女の手には鞘に収まった短剣が握られていて、それに気付いたミゲルの目が微かに細まる
「そんなものを持ってどうするつもりだ」
低く、威圧するような声色にリリアははっと我に返った
「レオンに……」
剣を握る手に力が入る
「持っておくよう言われたけれど、どうしたら良いのか分からなくて」