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果てのない海に呑まれて
第3章 レオンという男
丸一日も眠っていたのか
外は真っ暗で何も見えない
見上げれば満天の星空があるだけだった
"待って……街の明かりが見えない……"
それほど真夜中なのだろうか?
いや、違う
"船が……船が港を出てる!"
急いで海を見ようと顔を突き出すが、黒い波が船を揺らしているだけだった
「身投げでもするつもりか?」
後ろから声がかかり、リリアは驚いてさっと後ろを振り向く
途端にバランスを崩して危うく海に落ちそうになった
「……っと、さすがにこの闇じゃあ落ちても助けてやれんぞ」
レオンは間一髪でリリアの腕を掴み引き戻す
「船を出したわね」
睨み付ける彼女にレオンは肩を竦めた
「三日後にアウスグライヒの港に荷を届けなければならない」
「貴方の事情は関係ないわ! シエラに……私の家に帰して!」
「行っただろう、お前の家はもうない。今シエラに戻っても殺されるだけだ」
男は冷たく言い放つ
「貴方…何を知っているの……?」
「……別に、港で聞いたただの噂だ」
「なら分からないじゃない!」
頑として言うことを聞こうとしない彼女にレオンはため息をついた
「あーそうか。なら今から泳いでシエラまで戻るんだな。その代わり、死んでも文句は言うなよ?
この船は朝まではここに停めておいてやるから」