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果てのない海に呑まれて
第17章 細波
「……っ!?
あいつ……!」
ジェーニオの指す方向を見れば、そこにはリリアのドレスの裾を上げようとするミゲルと、慌てふためくリリアの姿があった
急いで彼らのもとに戻る兄を見送ることもせずに背を向けるジェーニオ
「…くだらない……」
そう呟いてさっさと馬車に乗ってしまった
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ガタンッ
道の小石に跳ね上がる馬車の振動にハッとし、ジェーニオは大きく舌打ちをした
「も、申し訳ありません、ジェーニオ様」
それを聞き付け焦る馭者。
「……」
ジェーニオは何も言わない
'ファルツの為に'
"兄上は何も分かってない"
かつての自分を棚上げにしたその言葉が気に食わない
本当にその意味が分かっているのなら、あんな風に楽しく笑ってなどいられないはずだ