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果てのない海に呑まれて
第17章 細波



「……早く出して」



そしてそれを冷ややかに見つめる青い瞳。

声こそ聞こえないものの、向こうの楽しげな雰囲気はここにまで届く



「偉そうに忠告までしておいて……」



ジェーニオは先ほどの出来事を思い出し、動き出した馬車の中でギリリと奥歯を噛み締めた



******************************



「ジェーン」



レオンは馬車に足を掛けたジェーニオの背中に呼び掛けた



「……何ですか、兄上」



会わないように出ようとしていたのに、準備がもたついて声をかけられてしまった

すぐにいつもの作り笑いを浮かべて後ろを振り向く



「またいつものお説教ですか。勘弁してください、母上にもう充分言われました」

「分かっているならそれを態度で示せ。でなければまた利用されるぞ」

「あぁ、今回の件では本当にご迷惑をお掛けしたみたいで。尻拭いまでさせてしまって申し訳ありません」



そう言うジェーニオの言葉には申し訳なさの欠片もない

レオンは深くため息ついた

弟を見るその瞳は、呆れというよりも心配しているように見える



「何度も言うが、ファルツの為に……」

「ファルツの一員としての自覚を持て、でしょう。聞き飽きましたよ。

それより、あれは"ファルツの一員"としてありなんですかね?」


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