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果てのない海に呑まれて
第17章 細波
「……早く出して」
そしてそれを冷ややかに見つめる青い瞳。
声こそ聞こえないものの、向こうの楽しげな雰囲気はここにまで届く
「偉そうに忠告までしておいて……」
ジェーニオは先ほどの出来事を思い出し、動き出した馬車の中でギリリと奥歯を噛み締めた
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「ジェーン」
レオンは馬車に足を掛けたジェーニオの背中に呼び掛けた
「……何ですか、兄上」
会わないように出ようとしていたのに、準備がもたついて声をかけられてしまった
すぐにいつもの作り笑いを浮かべて後ろを振り向く
「またいつものお説教ですか。勘弁してください、母上にもう充分言われました」
「分かっているならそれを態度で示せ。でなければまた利用されるぞ」
「あぁ、今回の件では本当にご迷惑をお掛けしたみたいで。尻拭いまでさせてしまって申し訳ありません」
そう言うジェーニオの言葉には申し訳なさの欠片もない
レオンは深くため息ついた
弟を見るその瞳は、呆れというよりも心配しているように見える
「何度も言うが、ファルツの為に……」
「ファルツの一員としての自覚を持て、でしょう。聞き飽きましたよ。
それより、あれは"ファルツの一員"としてありなんですかね?」